かくかく しかじか帳

藻の、思う・感じる・考えること

春を告げる鴨

 小川を鴨が泳ぐ。春が来るらしい。

 

 近所に小川がある。毎年春が近づくと、そこに鴨が数羽やってくる。子育てをするためだ。冬の終わりにやってきて、巣を作るのに適した場所を下見をしているらしい。小川は幅が狭く、流れもゆるやかだ。落ち着いた場所で卵を産みたいのだろう。

 

 東京に来て、三回目の春。鴨が巣を作る場所は大体予想がついている。川底が水面上に露出して、水草が生い茂っている場所だ。ゴールデンウィークの前には、そこに鴨の親子が身を寄せ合っている。毎年いつの間にか生まれていて、卵を見かけたことがない。気付いた時には小さな子鴨が親鴨の周りをスイスイと泳いでいる。

 

 私だけでなく、近所の人たちにとっても鴨の訪れはうれしい風物詩のようだ。歩く人たちが立ち止まって、鴨の様子をのぞきみる。小川の側は、保育園のお散歩コースにもなっている。時折先生が「鴨さんいるかなー?」と子どもたちと一緒にのぞき込んでいる。なんともほほえましい風景だ。

 

 今年こそは、卵の状態から孵化するところを見届けたい。いつの間にか咲く桜のように、季節の訪れを見逃さないように。