かくかく しかじか帳

藻の、思う・感じる・考えること

今あるモノを転職させる

 先日実家に帰った時、片付け上手の母から知恵をもらった。母はお土産に買って帰ったお菓子の箱を、階段下の収納に集めていた。何に使うのか聞いてみると、小物を整理するときの仕切りに使うとのことだった。

 

 洋服を入れた引き出しの中で、靴下やハンカチを仕分けしたり、キッチンのマグカップ置き場のそばに、ドリップコーヒーや紅茶のティーバックを入れて置いている。母は掃除好きの片付け上手だが、細部にも知恵が光っていた。

 

 私はこれを、モノの転職と呼ぶことにする。

 

 片付け上手な母のもとで育ったのに、私は正反対の掃除嫌いの片付け下手だ。家事の中で一番掃除をやりたくないし、片付けについても、モノを床に置かないという点をなるべく維持している程度だ。

 

 東京のアパートに帰った後、ふと文房具置き場が散らかっているのが気になった。百均で買った底の浅い長方形のプラスチックトレイに、ペンやハサミ、のりやメジャーなど一緒くたにして置いている。そのことによって、毎回欲しいものを取るときに邪魔なものを取り除いてから元に戻すという、めんどくさい動作をしていた。

 

 なんとかならないかと、よく使うものだけペン立てに入れて、デスク上に置けばよいと思い、ネットでペン立てを探したが、これと思うものが見つからない。デスクの目につくところに置くので、百均で適当なものを買うより、デザインが気に入るものが欲しかった。

 

 その時ふと母の、モノを転職させる発想を思い出した。家にあるものでペン立てに使えるものはないだろうか。片付け下手だと自覚しているので、使い終わったものは処分するようにしている。お菓子の缶や箱はない。そうなると、今別の用途で使っているものを転用する必要があるが、長らく使っていないアロマキャンドルがあることに気付いた

 

 アロマキャンドルの容器は黒のガラス製で、ラベルを剥がせばペン立てとして売っていてもおかしくない。半分くらいの蝋が残っていたが、中の蝋を溶かして、コーヒーカップに流し込むことにした。このコーヒーカップも、気に入ってはいるが食器棚の奥にしまい込んでいたものだ。

 

 キャンドルの芯には、ティッシュをこより状にしたものを使う。少しずつ蝋を流し固めて、ティッシュが直立した状態で固まれば、コーヒーカップのアロマキャンドルの完成だ。

 

 蝋を抜いたアロマキャンドルの容器の底には、梱包材として余っていたポリエチレンのシートを丸く切り抜いて敷いた。これでペンを入れた時に、ペン先がガラスにぶつかるツンとした音を防ぐことができる。こうして、アロマキャンドルはペン立てに生まれ変わった!

 

 初めてのモノの転職としてはうまく行き過ぎた。本来欲しかったペン立てに加えて、可愛らしいアロマキャンドルも手に入れたのだ!想像以上の効力に驚いた。今後の生活では、不要なものでも捨てる前に、何かに使えないか検討してみたいと思う。